難しい現場ゆえの「やりがい」

介護のプロでなければできないこと

家族の希望をくみ取った介護スタイル

家族の希望をくみ取った介護スタイル

特別養護老人ホームなどでは施設側の介護手法が基本となっていますが、在宅介護の延長線上にあるショートステイは介護を担う家族の要望を受け入れる介護スタイルをとっています。
例えば、家の中では可能な限り歩いて移動させるようにしている場合は施設内でも車いすを使わずに手引き歩行で誘導する、排泄には不安があるものの自宅ではおむつを使っていない場合は必要以上の介助はせず尿取りとトイレ誘導のみを行う、といったように普段の生活スタイルを崩さないように介護しているのです。
しかし、介護者である家族は自宅内での介護をイメージしてスタッフに伝えているため、広い施設内でも要介護者が同じ行動ができるかどうかまでは思い至っていません。狭い自宅では伝え歩きができていても、広いフロアで同じ方法で移動することが難しい場合もあるのです。排泄の介助も同様です。在宅介護は介護者が要介護者をマンツーマンで介護しているため、15分ごともしくは30分ごとに声をかけるのは難しくありませんが、他の入所者の対応も一緒に行っているショートステイのスタッフに同じレベルの声かけを望むのは無理があります。そのため、「家族にできることがなぜ介護のプロにできないのか」と詰め寄ってくるケースも珍しいことではありません。
確かに、家族にしてみたらショートステイに預けた後にADL(日常生活動作)のレベルが落ちていたら介護の手間が利用前よりも大きくなってしまいます。そうならないように、家と同じレベルの介護を希望するのは当たり前のことでしょう。
家族の希望をくみ取った介護を提供するためには初回のアセスメントでどれだけ状態を把握できるかがカギとなります。しかし、状態が把握できたからといって提供可能であるとは限りません。家族の希望をすべてくみ取った介護を行うのかどうかは、施設によって意見が分かれるところです。

すべて受け入れたらどうなる?

家族の気持ちに配慮してすべての希望をくみ取ったらどうなるでしょうか。現場のスタッフの仕事量が多くなり、大きな負担となってしまいます。時間的にも身体的にも追い込まれてしまうので事故が起こるリスクも高まってしまいます。ショートステイは介護をしている家族を癒やす存在ですが、100%受け入れることができないという対応の難しさもあるのです。しかし、その難しさこそがショートステイで働く面白味であり、やりがいなのです。
介護はケースバイケースなので、教科書のように正解が明確に定められているわけではありません。どのような介護が提供できるのか、あるいはどのような介護を提供したいのか、を職場で議論し、スタッフで知恵と技術を出し合って提供できるギリギリのラインを探っていく作業は介護のプロにしかできませんし、ショートステイで働く醍醐味とも言えます。

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